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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)395号 判決

事実及び理由

一  請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがなく、審決の理由の要点1ないし4の認定判断は原告も認めて争わないところである。そこで、原告主張の審決取消事由について検討する。

二1  取消事由(一)(請求の原因四2)について

TTL測光用受光装置には、本願考案及び引用例のものの対象としているフイルム面測光方式とこれとは異なる通常測光方式とがあり、これらはいずれも本願出願当時周知の技術であつたこと、通常測光方式において最適感度分布を有する測光を行ない得るようにすることがすでに周知であつたことは当事者間に争いがない。

原告は、審決の「TTL測光用受光装置において最適感度分布を有する測光を行ない得るようにすることはすでに周知である」との認定が通常測光方式についてのみならず、フイルム面測光方式のTTL測光用受光装置において最適感度分布を有する測光を行ない得るようにすることはすでに周知である、との内容を含むものであり、このことは事実に反するから、右審決の認定は誤りであると主張する。しかしながら、右認定について審決が参照文献として例示している「カメラ毎日」一九六七年一一月号二〇六ないし二一〇頁、第七図及び同誌一九六八年四月号一八三ないし一八八頁、第九図がいずれも通常測光方式についてのものであつてフイルム面測光方式についてのものでないことは成立に争いのない甲第七、第八号証から明らかであるので、審決の前記認定の趣旨は、通常測光方式のTTL測光用受光装置において最適感度分布を有する測光を行ない得るようにすることはすでに周知であるとしたものであつて、フイルム面測光方式について言及したものではないと解するのが相当である。したがつて、取消事由(一)は審決の認定していないところを非難するものであつて、原告のその余の主張の当否を判断するまでもなく、失当といわなくてはならない。

2  取消事由(二)(請求の原因四3)について

原告は、本願考案は、フイルム面測光方式のものにおいて、最適感度分布を有する測光(画面の中央がピークとなる感度分布の測光)を行ない得るように測光用受光装置の光軸を露出画面中央よりはずれた所定の位置に指向させた構成(受光装置の指向構成)をもつて必須の要件とすると主張するので、この点について考察する。

成立に争いのない甲第三号証によると、本願明細書の考案の詳細な説明の項は七つの段落からなつており、それぞれ次の記載内容を有することが認められる。

まず、第一段落は、「本考案はTTL方式でフイルム面又はシヤツター幕の反射光を受けて露光量を制御するカメラの受光装置に関するものである。」として本願考案の対象を明らかにし、次いで、第二、第三段落は、「このようなカメラに於ては受光素子は撮影光路を避けるため、フイルム又はシヤツター幕面に対して斜に配置される。その結果受光素子に最も近い画面の部分を重点に測光することになる。」「本考案はこのようなカメラに於て受光素子の前面に集光レンズ及び遮光筒を設け、集光レンズの光軸を測光上最も都合の良い画面部分に向けて配置することにより正確な露光を得ようとするものである。」として、フイルム面測光方式において測光用受光素子は、撮影光路を妨げないように撮影光路外に設けられ、フイルム面又はシヤツター幕面に向つて斜に配置されることになるが、そうすると受光素子はそれに最も近い画面部分を重点的に測光してしまうという欠点があること、本願考案は、この欠点を解消するために、受光素子の前面に集光レンズ及び遮光筒を設け、この集光レンズの光軸を測光上最も都合の良い画面部分に向けて配置するという構成をとることにより正確な露光を得ようとするものであることを説明し、もつて、本願考案の構成を簡潔に述べ、その目的とするところを明らかにしている。第四段落は、添付図面について実施例を説明する部分であり、「図について実施例を説明すると1はカメラ、2は撮影レンズ、3はシヤツター幕、4はフイルムで、受光素子5には遮光筒6が嵌まり撮影レンズの光路外に固定される。遮光筒の先端には集光レンズ7が設けられ、その光軸は画面の中央より上寄りに向けられる。」として、図面に示された受光装置を暗箱内の下部に設けた実施例について説明している。第五段落は、「レンズを透過した光線はフイルム面又はシヤツター幕面で反射して集光レンズを通つて受光素子に入射するが、光軸は前述の如く画面の一定部に向けられ受光角は集光レンズ及び遮光筒によつて制限されて居るから、画面内の最適位置の反射のみを測光することが出来て、例えば天空光が画面内に入るようなシーンの撮影に当つてもその反射光が測光に影響することがなく露光が正確に行われることになる。」として、本願考案の構成を採用したことにより露光が正確に行なわれる理由を説明している。第六段落は、「本考案をレンズシヤツターカメラに適用するときはフイルム面の反射光を測光し、フオーカルプレンシヤツターカメラではシヤツター幕面での反射光をも測光することができる。」として、本願考案の適用できる範囲を示している。第七段落は、本願考案の作用効果について述べる部分で、「本考案は上述の如く構成したから集光レンズの光軸を画面の最適位置に向けることにより撮影に最もふさわしい感度分布が得られ、又遮光筒によつて、カメラ内部の有害な迷光例えば一眼レフカメラに於けるフアインダーからの光や内面反射光が受光素子に入るのを防ぎ正確な測光が得られ、発光量制御式電子フラツシユや、電子シヤツターを使用するカメラに於て極めて有効である。」として、撮影に最もふさわしい感度分布が得られるのは上記のとおり構成した受光装置の集光レンズの光軸を画面の最適位置に向けて配置することによるものであること、遮光筒はカメラ内部の有害な迷光が受光素子に入るのを防ぐものであり、これにより正確な測光が得られることを本願考案の効果として記載し、本願考案が発光量制御式電子フラツシユや電子シヤツターを使用するカメラにおいて極めて有効である旨述べて、その考案の詳細な説明を終えている。

以上に検討した本願明細書の考案の詳細な説明と図面の記載及び当事者間に争いのない本願考案の実用新案登録請求の範囲によれば、本願考案は、フイルム面測光方式の測光用受光装置につき、フイルム面測光方式において測光用受光装置は撮影光路の妨げとならないように暗箱内の撮影光路外にフイルム面又はシヤツター幕面に向つて斜に配置されるものであるところ、受光装置として受光素子のみを設けた場合には、これを測光上最も都合の良い画面部分に向けて配置したとしても受光素子は最も近い画面部分からの反射光に重点的に感じてしまい正確な露光が得られなくなるとの知見を得て、これに基づき右欠点を解消するために、受光素子の前面に遮光筒を設けて暗箱内部の測光には有害な迷光が受光素子に入ることを防ぎ、その上、この遮光筒に集光レンズを設けてこれらによつて受光角の制限をし、受光素子が集光レンズの光軸の向けられた画面の一定部からの反射光のみを受光すべきものとし、このように構成した受光装置をその集光レンズの光軸が測光上最も都合の良い画面部分に向けられるように配置し、もつて最適な感度分布を得、正確な測光を得られるようにしたものであることが認められる。

以上認定の事実によれば、本願考案の実用新案登録請求の範囲の「該レンズをフイルム面ないしシヤツター幕面の露光画面ないし担当位置内の所定測光部位方向からの光を受光するように設け」とは、受光装置の集光レンズの光軸を測光上最も都合の良い画面部分に向けて配置することを意味し、これに続く「該画面内反射光束に基づいて最適感度分布を有する測光を行ない得るようにした」とは、右測光上最も都合の良い画面部分からの反射光束のみを受光素子に受光させることにより撮影に最もふさわしい感度分布を得正確な測光を得られるようにしたことを意味するに過ぎず、それ以上特段の意味を有しないことが明らかである。すなわち、仮に「最適感度分布」が原告主張のとおり画面の中央をピークとする感度分布を意味するとしても、右集光レンズの光軸を指向すべき所定測光部位をどのように定めれば最適感度分布を有する測光を行ない得るかは、前記実施例の説明としての抽象的な記載を除き、本願明細書に全く特定されていないのであるから、原告主張の受光装置の指向構成が本願考案の必須の要件であるとは到底認められず、原告主張の取消事由(二)は採用することができない。

3  そして、本願考案の「該レンズ(集光レンズ)を……所定測光部位方向からの光を受光するように設け」という構成は、前認定のとおり、受光装置の集光レンズの光軸を右「所定測光部位」に向けて配置するということに過ぎないので、通常測光方式において最適感度分布を有する測光を行ない得るようにするという前叙当事者間に争いのない周知の技術を引用例記載のフイルム面測光方式の受光装置に適用し、本願考案の右構成を得ることは当業者がきわめて容易になし得たものと認めるのが相当であるから、この点に関する審決の判断に違法な点はない。従つて審決の取消を求める原告の本訴請求は理由がない。

三  よつて、原告の本訴請求を棄却することとする。

〔編註〕本件における実用新案登録請求の範囲は左のとおりである。

カメラの暗箱内の撮影光路外位置にフイルム面またはシヤツタ幕面からの反射光を受光する受光素子を配置するとともに、該受光素子前方に遮光筒と集光レンズを設け、該レンズをフイルム面ないしシヤツタ幕面の露光画面ないし相当位置内の所定測光部位方向からの光を受光するように設け、該画面内反射光束に基づいて最適感度分布を有する測光を行ない得るようにしたことを特徴とするTTL測光用受光装置。

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